■概要
本作は「アルスラーン戦記」などを描いている田中芳樹氏の作品で、1982年から1989年に発刊されたSF小説になります。
SF小説でありますが、架空の歴史小説の体裁を取っているので歴史が好きな方は必読の小説になります。
後述しますが政治の在り方などを考えさせられる場面も多く、エンタメだけではない内容の深みがあります。
■あらすじ
宇宙に進出した人類は主に皇帝と貴族が支配する銀河帝国ゴールデンバウム朝と民主主義を掲げる自由惑星同盟の二大陣営に分かれた。
銀河帝国はローエングラム候、自由惑星同盟はヤンウェンリーという英雄が現れ覇権争いが大きく動き始めるお話になります。
■本の印象
■おすすめポイント
・架空の歴史小説の体裁をとっており大河ドラマが好きな方など歴史好きにとってはたまらない
・権謀術数も多く読みごたえのある戦闘描写
・帝国側はローエングラム候、自由惑星同盟はヤンウェンリーを中心とした群像劇が面白い
・二つの陣営のイデオロギーのぶつかりも随所にあり、政治の在り方を考えるきっかけになる
■どんな人におすすめか
・歴史が好きな方
・戦術に興味がある方
・群像劇が好きな方
・政治に興味がある方
■注意点
・本編で10巻、外伝5巻という超大作なため、読むのが大変
※出版社によって巻数は違います
・登場人物が非常に多く誰が誰だったかわからなくなる(アニメ(1988年版)では当時の有名な声優さんがほとんど出演されていたことから銀河声優伝説と言われることも・・・)
■読んでみた感想(ネタバレ含みます)
物語の中心人物であるローエングラム候とヤンウェンリーは対照的な人物として描かれており、それが物語の面白さや深みに繋がっていると感じました。
具体的には帝国側はローエングラム候は自分の才覚に対して絶対の自信を持っており、一方自由惑星同盟のヤンウェンリーは軍人にも関わらず戦争を嫌うなど自虐的な発言が多く対照的な人物像になっています。
ローエングラム候とヤンウェンリーの発言で特に印象に残った内容を下記で紹介したいと思います。
■ローエングラム候の発言
自分の実力や努力によることなく、単に相続によって権力や富や名誉を手に入れた者が、何を主張する権利を持っているというのだ? 奴らには、実力ある者に対して慈悲を乞う道が許されるだけだ。おとなしく歴史の波に消えていくことこそ、唯一の選択だ。血統による王朝などという存在自体がおぞましいと私は思う。権力は一代かぎりのもので、それは譲られるべきものではない、奪われるべきものだ。
上記はローエングラム候の思想をよく表している発言です。
現実世界でも相続で権力や富を手に入れる方はいるが、そういった制度は本当に妥当なのか考えさせられる発言であり、よりよい社会を作るには皆で上記内容を考え議論することが大切だと感じました。
■ヤンウェンリーの発言
政治の腐敗とは、政治家が賄賂をとることじゃない。それは個人の腐敗であるにすぎない。政治家が賄賂をとってもそれを批判することができない状態を、政治の腐敗というんだ。貴官たちは言論の統制を布告した、それだけでも、貴官たちが帝国の専制政治や同盟の現在の政治を非難する資格はなかったと思わないか
上記発言からメディアから受け取る情報の大切さを感じましたので、紹介します。
私たちは物事を判断する際にいろいろな意見を見たうえで自分で判断を下すと思いますが、受け取る情報が偏ってしまうと正しい判断ができなくなる恐れがあるなど私たちは受け取る情報に関してきちんと精査することが必要だと感じました。
■おわりに
銀河英雄伝説を紹介させていただきました。
非常に重厚な作品で読み終わった後は物語が終わってしまった寂しさを感じる作品でした。
また、手に汗握る展開でエンタメとしても素晴らしい作品でありながら、上記で引用させていただた発言以外にも考えさせられる場面が多く、政治について考えるきっかけになる作品だと思います。
こんなに長い小説を読むのは辛いよという方には今回は本紹介でしたが、漫画やアニメ、ゲームなどもありますので、それぞれ楽しみやすいコンテンツを選んでみてください。
読んでいただきありがとうございました。
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