■概要
本作は料理研究家である土井善治氏の作品で、2016年に発刊された本になります。
料理研究家の立場から、食の考え方を発信してくださった内容になります。
忙しい中料理を作る時間を作ることが難しい方も多い時代で食に悩みを抱えている方も多いと思い紹介させていただきます。
■構成
大きく分けて8個の章立て構成になっています。
1章:今、なぜ一汁一菜か
2章:暮らしの寸法
3章:毎日の食事
4章:一汁一菜の実践
5章:作る人と食べる人
6章:おいしさの原点
7章:和食の初期化する
8章:一汁一菜からはじまる楽しみ
一汁一菜の意義や実例の紹介から食を通した教育や日本人の在り方といったところまで発信する構成になっています。
■本の印象
■おすすめポイント
・食に対する考え方を学べる
・一汁一菜の具体的な料理例の記載がある
・食を通して教育や日本人の在り方を学ぶことができる
■どんな人におすすめか
・日々の食事を作ることに悩んでいる方
・健康を意識している方
・食を通した教育の在り方に興味がある方
・食を通した日本人の在り方に興味がある方
■読んでみた感想(ネタバレ含みます)
特に心に残った内容が2点あります。
一つ目は「自分の身体を信じる」、二つ目は「見返りを求めない家庭料理は、命をつくる仕事」になります。
それぞれ以下で説明します。
■一点目
脳が喜ぶおいしさと、身体全体が喜ぶおいしさは別だと思うのです。
(中略)人間は命をつくるために料理し、元気をつけるために食べ物を食べるのです。
脳が喜ぶおいしさとは特別な日とかに食べる料理をイメージしていただければわかりやすいと思う。
霜降りのお肉だったり、脂ののった魚など舌から直接脳に届く”おいしさ”である。
身体全体が喜ぶおいしさとはおふくろの味をイメージしていただければわかりやすいと思う。
食べてほっとする、脳を刺激しないが心地よいおいしさである。
脳が喜ぶおいしさをどうしても求めてしまう傾向があると思うが、身体が喜ぶかどうかは別問題というところにはっとさせられた。
毎日霜降りのお肉は食べるのはつらくなるという方が多いと思うが、普段の生活で安定した能力を発揮するには地味だがごはんや味噌汁、ひじきといった”普通のおいしさ”を大切にすべきことを再認識することができました。
■2点目
人間の暮らしでいちばん大切な事は、「一生懸命生活すること」です。料理の上手・下手・器用・不器用、要領の良さでも悪さでもないとないと思います。
(中略)親が一生懸命生活していることが、教育の本質であり、たとえそのときは親の気持ちを理解できないことがあっても、いずれ子どもたちは経験を更に重ねて、大人になればきっとわかるようになります。
家庭料理の役割は食事だけではなく教育の役割があることを土井氏は述べています。
家庭料理は味がどうこうではなく、親が自分たちのために料理を一生懸命作ってくれている姿を子供たちが見ることが教育に繋がることを述べています。
現代は共働きの方も多く忙しく中々子供に手作りのものを食べさせるのが難しい時もあるかもしれない。
そんなときでも子供に対して一生懸命生きている親の姿を見せることで子供も親の想いや愛情を感じ、感受性や人を思いやる気持ちを育むことに繋がるということです。
また、手作りのものを作る一つの選択肢として土井氏が提案する一汁一菜を取り入れてみるのは如何だろうか?
■おわりに
一汁一菜でよいという提案を紹介させていただきました。
食そのものだけでなく食を通して教育や日本人の在り方や考え方まで発信されていて食の大切さを再認識させていただく作品でした。
読んでいただきありがとうございました。
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