■概要
本作は将棋棋士である米長邦雄氏の作品で、1993年に発刊された本になります。
将棋棋士の立場から、勝負の考え方を発信してくださった内容になります。
勝負の考え方だけでなく人生論にとも繋がっていて、今の時代では中々知ることができない昭和の時代の感覚を学ぶことができる良書のため紹介させていただきます。
■構成
7個の章立て構成になっています。
1章:さわやか流の勝負勘
2章:集中力をどう時続させるのか
3章:非情に徹する勇気が必要
4章:ただ勝つだけでいいのか
5章:強者は泥沼で戦う
6章:逆転のテクニック
7章:男らしさとは何か
米長邦雄氏が将棋棋士人生から将棋を通して大切していること心がけていることをテーマ毎に分類して発信する構成になっています。
■本の印象
■おすすめポイント
・勝負に対する考え方を学ぶことができる
・男らしさとは何かなど人生論を学ぶことができる
・将棋棋士が実際の対局で何を考えていたかの一端を知ることができる
■どんな人におすすめか
・勝負に対する考え方に興味がある方
・将棋に興味がある方
・男らしさについて興味がある方
・人生論について興味がある方
■読んでみた感想(ネタバレ含みます)
特に心に残った内容が2点あります。
一つ目は「名人戦より必死にやるべき対局とは何か」、二つ目は「清濁併せ吞むとは」になります。
それぞれ以下で説明します。
■一点目
私の見るところ、一生のツキを呼ぶとか、何年間かのツキを呼び込む大きな対局とは、実は自分にとっては一見、何の影響もない一番、その勝敗が自分の進退には直接影響がないけれども、相手にとっては大変な意味を持っている勝負なのです。
自分にとっては大切でない対局でも相手にとって昇段がかかっているなど重要な対局に必死に勝ちに行くことで相手の勢いを吸収しツキを呼び込めるという考え方です。
上記は将棋界では”米長哲学”と呼ばれ大切にされている考え方です。
特に相手が仲が良い方だったりするとなあなあで済ませてしまいたくなるが、こういうところで手を抜かないことが後々自分に返ってくるという勝負の世界で生きてきた経験から語られており含蓄を感じました。
物事を近視眼的な見方をするだけでなく、長期的な目線で何が大切なのか考えて行動することが大切だとか私は感じました。
■2点目
大局観的な見方から出てきた正解、判断を曲げず、自分も含めたいろいろな人の私情を汲んでやれれば、それが最高でしょう。
(中略)そして、情と理性はまったく相反するものではないけれど、その二つの対立があった場合には、まず自分の情を捨て、他の人の情と理性の両面から、納得のいく方法を選べる人。こういう人が、男らしい男だと思います。
男にとって大切なことは大局的な見方をすること、つまり自分だけなく相手のことに配慮し、なおかつ相手の情を優先した決断できる「清濁併せ吞む」ができることが大切ですと述べています。
これは言い換えると“貸し方の立場に立った生き方”をせよということです。
“貸し方の立場に立った生き方”をするには、お金の面であれ知能の面であれ何か自分の強みがあり、余裕がなければいけません。
私は誰もが損はしたくないと思うが、そういった感情を後回しにできるよう自分の能力に自信や誇りを持てることが大切だと感じました。
■おわりに
人間における勝負の研究を紹介させていただきました。
将棋棋士として勝負の世界の経験を通して勝負の考え方や生き方を発信されていて“勝負の熱”が伝わってくる作品でした。
今の時代に男らしいというと時代遅れと言われてしまうかもしれないが、男であれ女であれ生き方について考えさせてくれる作品です。
それは将棋棋士としての長く勝負の世界を生きてきた経験に裏打ちされている言葉や考え方だからこそ深く感銘を受けたのだと思います。
読んでいただきありがとうございました。
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